ドイツ語はオーストリア、ドイツ、スイスを中心とするドイツ語圏で広くで公用語として使われてる言語ですが、とても多様性のある言語です。このコラムではそのドイツ語の多様性と、3つの国の文化的・言語的特長をご紹介したいと思います。もしかしたら「一つの正しい標準ドイツ語」が存在すると思っている方もいるかもしれませんが、実はそうではないのです。私たちは、言葉の受け手によって-その人の年齢や時、場所などによって-それぞれに合った適切なドイツ語表現があると考えています。

ドイツ語の多様性について、5つの疑問にお答えします。

〈1〉なぜ、ドイツ語=ドイツ語ではないの?

ドイツ語は言語学の用語で「複数中心地言語」と呼ばれる言語です。日本人に最もなじみのある例としては、アメリカ英語やイギリス英語などがある英語もこの複数中心地言語のひとつです。オーストリア、ドイツ、スイスと言うドイツ語の“3つの中心地”では、それぞれの「標準ドイツ語」が発達して来ました。このそれぞれの国の標準ドイツ語を「標準変種」と言います。3つの国の標準ドイツ語は語彙、文法、発音などの点で少しずつ異なっています。

〈2〉ドイツ人、オーストラリア人、スイス人は 言葉が通じないということですか?

そういう訳ではありません。書き言葉においては3カ国の標準ドイツ語は詳しい人でないと区別できないでしょう。それに対して話し言葉では、すぐに違いが分かります。その違いを実感するには公共放送のニュースを比べてみるのが一番分かりやすいと思います。どこの国でも、公共放送のメインニュースはその国の標準ドイツ語が忠実に話されています。スイス、ドイツ、オーストリアの同じテーマのニュースを聞き比べてみてください。

We need your consent to load the content of YouTube.

Mit dem Klick auf das Video werden durch den mit uns gemeinsam Verantwortlichen Youtube [Google Ireland Limited, Irland] das Video abgespielt, auf Ihrem PC Skripte geladen, personenbezogene Daten erfasst und Cookies gespeichert. Mit Hilfe der Cookies ist Google in der Lage, die Aktivitäten von Personen im Internet zu verfolgen und Werbung zielgruppengerecht auszuspielen. Weitere Informationen finden Sie hier.

PHA+PGlmcmFtZSBzcmM9Imh0dHBzOi8vd3d3LnlvdXR1YmUuY29tL2VtYmVkL3ZpZGVvc2VyaWVzP2xpc3Q9UExJbHY4eGw1QXVSS1dUbS1lX3BTVjFlai14dDRZY2xRciIgYWxsb3dmdWxsc2NyZWVuPSJhbGxvd2Z1bGxzY3JlZW4iIHdpZHRoPSI1NjAiIGhlaWdodD0iMzE1IiBmcmFtZWJvcmRlcj0iMCI+PC9pZnJhbWU+PC9wPg==

〈3〉書き言葉では3カ国のドイツ語にどんな違いがありますか?

スイスドイツ語のテキストは比較的すぐに判別できます。スイスでは他のドイツ語圏でgroß(グロース・大きい)と表記する所を、grossと表記するからです。ドイツ語に特有のアルファベットであるß(エスツェット)はスイスドイツ語では1970年代から使用されなくなりました。それ以外にもドイツ、オーストリア、スイスでそれぞれ特有な語法があり、その特徴によりどの国のドイツ語かが判別できます。単語や慣用句、言い回しなどの中には、1つの国でのみ使われるものがあります。

よく話題になるのは食べ物の名前でしょう。日本でもマーシュやラムズレタスと言う名前で少しずつ見かけるようになってきたベビーリーフがあります。このマーシュはドイツ語圏ではサラダなどによく用いられる野菜ですが、ドイツではFeldsalat(畑の菜)、オーストリアではVogerlsalat(鳥の菜)そしてスイスではNüsslisalat(ナッツの菜)とそれぞれ違う名前で呼ばれています。
行政手続きの用語も3カ国で別の名称を用いることがあり、例えばオーストリア人がドイツに引越した場合などに戸惑う場面も多くあります。他にも、ビジネスで日常的に使う言葉で「見積り」などの意味のあるAngebotという言葉。これはドイツでの言い方であって、オーストリアではAnbot、スイスではOfferteと言います。3カ国のドイツ語の違いはほとんどの場合細かいものですが、とても多様でそれぞれの国の文化的背景が反映されています。

〈4〉テキストをその国にあったドイツ語にしないと不評を買ってしまう?

はい。特にPR向けのテキストでは、ターゲットの国で実際に使われているドイツ語を用いる必要があると思います。そうすることでターゲットに届くものになり、ポジティブな印象を与えることが出来ます。

ドイツ語圏での広告の例を見てみましょう。

オーストリアが本社のレッドブル社がSimply Colaと言う商品を2008年からドイツ語圏全域で販売しています。その広告のコピーは「Das Cola von Red Bull(レッドブルのコーラ)」。ドイツでは当時このコピーに違和感を感じた人も多かったのです。Colaに付く冠詞はオーストリアではdas(中性形)、これに対してドイツではdie(女性形)が用いられるのが一般的だからです。

〈5〉ドイツ語圏全域で受け入れられるテキストにすることは可能ですか?

はい、出来ます。特に情報を伝えることを目的としたテキストの場合はあまり問題がありません。私自身はスイス人ですが、ラジオの取扱説明書でßが全てssで書かれているのを期待していません。

PRを目的としたテキストの場合は少し違ってきます。PRテキストの目的はターゲットとなる人の行動を促すことですから、それを意識する必要があります。ターゲットが地域的にある程度限定できる場合は(例:スイスの顧客向けニュースレター)、その地域に合わせたドイツ語表現(スイス標準ドイツ語)にするとより高いPR効果が期待できるはずです。対象の地域が広くなってくると、言葉の地域性を表現に取り入れることは難しくなります。ターゲットをドイツ語圏全域にするならば、より一般的な表現にする必要があります。

皆さんはドイツ語の多様性に関して何かエピソードをお持ちですか?地域に合わせてドイツ語のローカリゼーションをすることに意味があると思いますか?それとも、ドイツ語圏全域に向けたテキストにするアプローチをご希望でしょうか?